mirage of story
「色々、考えていたんだよ」
カイムは、ここでようやく振り返ってシエラの方を見る。
「......そう」
ッ。
カイムを見つめてそう頷くと、シエラはスッとカイムの隣に腰を下ろした。
その拍子に揺れる彼女の髪がフワリとカイムを撫でる。
湯を浴びた訳でも無いだろうに。
彼女の香りはいつでも心地良いと、カイムは心密かに思う。
「少し、一緒に居ていいかしら?」
「あぁ」
隣り合った二人。
シエラとカイムは一度顔を見合せて、それから二人空を見上げた。
二人を包む、ひとときの沈黙。
何だか、心が落ち着いた。
「─────カイム。
大丈夫?」
そして、暫くの沈黙の後にシエラの声が、静かに響いた。
「大丈夫って.....俺は、全然平気だよ。
どうしてそんなこと聞く?
俺は―――平気だ」
不意に、そう尋ねてきたシエラにカイムは不思議そうな視線で返した。
大丈夫?
聞かれた声に自分の内にある不安を見抜かれた気がして、カイムはドキッとした。
「さっきのカイム、何だかいつもと違ったわ。
いつもの貴方じゃなかった。
だから、心配になって」
カイムが横に居るシエラの方を見る。
すると目の前には心配そうにこちらを覗き込む彼女の顔。
―――。
それに今度は違う意味合いでドキッとする。
「あぁ、さっきのことか。
ごめん、先を急がなきゃならないのに......俺、勝手なことを。
ロアルが魔族が関われば危険だし、俺達にはまだその危険に向き合う準備も出来てないのに―――本当に、ごめん」
「勝手なこと?」
カイムの言葉に、今度はシエラが首を傾げて視線を送る。
「────俺はどうしても、このまま黙ってるのが出来なかったんだ」
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