mirage of story
帰ってくれば『大きくなったな』と頭を撫でてくれた。暖かい部屋の中で、母と父とカイムで笑顔で笑い合った。
カイムは、頭の中で巡る記憶の中で幼い頃の幸せを噛み締めた。
(─────あの頃は、幸せだった。
母さんが居て、父さんが居て.......俺が居て。足りないものなんて何もなかった)
なのに。
なのに、その幸せはもうない。
全て奪われてしまった。
今のカイムには、あの頃の幸せの欠片すら残ってはいない。
脳裏に蘇るあの頃の温かさが、胸の中にじんわり凍みる。
─────....。
と、呆然と記憶に浸っていたカイムは不意によろよろになりながらも走り続けていた、かつての自分の足が止まった気配を感じて、そちらに視線を戻した。
『行かないで.......』
幼いカイムは、もう擦れて聞き取れないくらいの細い声で呟くとその場に、倒れこんだ。
(.......あ....)
そんな様子を前に、カイムは思わず駆け寄る。