mirage of story
その黒い風の渦。
────。
目の前にあるのはまだ小さかったけれど、カイムには見覚えのあるものだった。
「........。
あの時の風────」
あの時。
ッ。
カイムの脳裏に深く残酷に刻まれた記憶。
カイムの村が黒い風の渦に巻き込まれたあの時。
消えたあの時。
帰る場所を失った、あの時。
同じ匂いがした。同じ気配がした。
その時の村を消し去った謎の黒い死の風と
。
「────。
皆に知らせなきゃな」
カイムの村はあの黒い風に囲まれた。
まるで風が村を喰らうかのように全てを飲み込んだ。
逆巻く風。
巻き上がる土埃。
逃げ出せなくて助け出せなくて。
..........。
何もすることが出来ないまま全てが虚しく消え去った。
全てを.....カイムの全てを巻き込んで消えたのだ。
一瞬にして。
ッ。ダッ。
カイムは入り口に背を向けて走り出す。
胸には焦燥感。
そして思い起こされたあの時の虚無感と自分の無力さへの後悔が渦を巻く。
少し埃っぽい廃墟の床を蹴って疾走する。
グラリ。
僅かに灯された蝋燭の灯が通り過ぎた拍子に
揺れる。
急がなければ。
本能が早くこの場から逃げ出さなければと諭していた。