mirage of story
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「シエラ.....!」




カイムは、その入り口から出てくるはずのその人の姿はまだ見えないが
押さえきれなくなって、その人の名を呼んだ。







「.....あ」




────だが、入り口から飛び出してきた人影は彼の求めていた人....
シエラでは、なかった。






「.........旅のお方、まだお逃げになっていなかったのですか」




飛び出してきた人影。

この街の長であるあの老人が、カイムの姿を捉えて声を上げた。







「はい、俺は全員が逃げてからと思って。

.....あの、まだ中に人は居ましたか?」





カイムは、求めていた人影でないことに心の何処かで密かに落胆しつつも

その気持ちを抑えて、尋ねる。






「いや.....逃げ遅れてる者が居ないか確認してきたので私で最後だと思うのですが。

......如何なさったのですか?」





カイムの曇った表情に、老人の顔も次第に曇る。


不安な気持ちは伝染するというが、その通りらしかった。








「─────シエラの姿がまだ見えないんです。
ずっと、見ていたんですけど」





「.......なんと、ではまだこの中に居るというのですか?」




二人の視線が、暗さの広がる廃墟の中へと注がれる。



......この中に
シエラは、居るのか?

奥に続く闇に吸い込まれるように、その先を見つめる。







 
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