mirage of story
カイムはその瞳に映し出した光景を頭の中で認識した瞬間、言葉を詰まらせる。
.....振り向いたシエラの肩の向こうに、瓦礫の下敷きになり動けなくなっているネビアの姿が見えた。
ぐったりとするネビア。
その顔に......血の気はなくて、事態の悪さを表す。
「多分、さっきの大きい揺れで壁が崩れて......それで」
ネビアの身体に覆い被さる廃墟の残骸に視線を向ける。
「さっきは意識があったの......でも、さっきの揺れで
────意識が」
シエラは、ネビアに歩み寄り手を触れる。
さっきは温かかったネビアの手は.......冷たかった。
ヒヤリと、嫌な汗が伝う。
「....意識がないのか」
「うん」
シエラは頷く。
「さっきの揺れの後、壁が崩れて.....凄い大きな風が迫ってきて、もう駄目だと思った。
........でも、ほら─────」
シエラは冷たくなったネビアの手を温めるように擦りながら
フッと視線を逸らす。
逸らした視線の先には、地を巻き上げて止まったままの黒い風。
それが、まるでオブジェのようにそびえ立っていた。
「........俺も壁が崩れてきて、危機一髪のところでこんな状況になったんだ。
こんな状況になってなかったら、俺はここまで来れなかった。多分.....今頃瓦礫の下だったよ。
─────これ、シエラがやったのか....?」