mirage of story
カイムはさっき言い掛けた言葉を一旦完全に頭の奥へと追いやった。
そしてぐったりとするネビアの身体を抱き起こして、立ち上がる。
その瞬間にまた嫌な汗が流れた。
だが、今は気にしている暇はなさそうだった。
(.......今は逃げるのが先決か)
「───────シエラ、準備はいいか?」
「うん.....カイム」
シエラは、もう消えそうな程の光を放つ剣に駆け寄る。
そして、そっとその剣の柄に触れて、それからしっかりと掴むと
........一気にそれを、引き抜いた。
それと同時に二人は、駆け出す。
───────ゴォォ.....ッ。
その瞬間、止まっていた時は動き出す。
......轟音が、再び辺りを支配する。
黒い風は、廃墟を巻き上げながら逆巻き始める。
そんな中、二人は全力で駆ける。
動き出した時間の波が、容赦なく彼等を追い掛ける。
─────逃げ切れるか?
それは分からない。
だが、今は逃げるしかない。
自分たちには、まだすべきことが残っている。
果たさなければならない目標も。約束も。
だから、俺達は
生きるために.....走る。