mirage of story
そして、ぐったりと横たわるネビアの元へ。
「────さぁ、行きましょう。ネビアさん」
カイムの手が、返事のないネビアの体へと触れる。
(........)
ネビアに触れたその瞬間、カイムは身体中から嫌な汗が流れるのを感じた。
冷たく悲しい.....そんな感情が混ざった汗の滴がカイムの額から、地面へと落ちる。
「──────なぁ、シエラ......ネビアさんは.......」
「──────ねぇ、カイム.....あれ」
カイムは、シエラに嫌な汗の原因となったことを伝えようと口を開いた。
だが、その言葉紡ぎだされるその前に、シエラの声が遮る。
その声は、今までの声のトーンと少し違っていた。
「....どうした、シエラ───」
カイムは、喉まで出かかった言葉を飲み込んで、声を上げるシエラの指差す方を振り返る。
「.....剣の光が消えかけてる」
指差す先には、地に突き立てられたあの一本の剣。
だがその姿は、さっきとは違っていた。
剣の纏っていた光のベールが、薄く消えかけている。
「もしかしたら、もうすぐ時が動き出すっていう合図なんじゃ.....ッ!
早く逃げないと!
カイム、早くネビアさんを.....ッ!」
心なしか、さっきまで完全に止まっていた時間が動き出しているような気がした。
現に、さっきカイムが払った埃はもう既に宙にはなくて、下に舞い落ちていた。
「────そうだな。
.......準備はいいか、シエラ?逃げるぞ!」