mirage of story
 
 
 
 
 
 
 
ライル、
彼の剣の腕前は並の兵士とは比べ物にならないくらい卓越している。

それに加えての判断力と歳の割には多い実戦経験、他の兵は持っていない軍人としての才がある。
腕前としては適任だった。





―――。
だがこの若さ故の問題もある。

部下となった自分より年上の者達の中には、彼のことをよく思わない者も居るのだ。




確かに、自分より遥かに年下の奴に指図されるのは気分が良いことではない。
それは分かっている。


だがこれは実力から考えても当然なことなのである。
そうであるのに何かと陰で言われるのはどうも納得がいかない、そう思うこともある。




――――。
兵士たちは、表にこそ態度には出さないものの陰で色々と文句を言っている。
その文句の対象の本人である彼もそれには気付いていた。


........。
そんな陰での言葉が耳に入る度、聞こえていないようなふりをした。

此処で下手に感情を出せば余計に兵士たちの反感を買う。
軍内で仲間割れが起これば、戦力にも悪い影響を及ぼす。










(とは言っても.....疲れる)



彼は王の元へと向かう廊下を歩きながら、もう一つ深い溜め息をついた。


ライルが指揮を執るようになってから、あまり行動がまとまらない。
何だか軍全体に張りがないのである。


――――。
だがそれは分かっていようと、どう頑張っても現状は変わらない。

やはりまだ少年である彼に従う者達の心が彼を心から認めていないからであろう。
上に立つ者への尊敬が無ければ、その集団が纏まらないのは当然である。







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