mirage of story
 
 
 
 
 
 
「奴隷───。

..........ねぇ、おじさん?
この人は奴隷と呼ばれてる人は、何か悪いことでもしてしまった人なの?
だから倒れてても助けなかったり、心配しなくてもいいだなんて言うの?」




ルシアスは男の前に立ちふさがったまま、一度後ろで倒れているその人を見る。
そして真っ直ぐな視線のままに今度は男の方を向き直した。











「悪いこと?
いいえ?別にこの者達は犯罪などは犯してはいませんよ。

強いて言わせて頂くなら、奴隷という身分で姫様のお目に入ったことくらいでしょうか」




男はフッと鼻で笑い、倒れいるその人を再び見る。

ッ。そして一言。
追い打ちをかけるような言葉を続ける。






「生かしてもらっているだけでも、感謝すべきことを。
姫様に無礼を働くとは、とんでもない大罪かもしれませんね」



────。ッ。
立ちはだかる子供達に衝撃が走った。









「この人、私に何にも悪いことしてない!
なのに何でこんな酷いことをしても許されるの?
そんなの可笑しいわ!」



問い掛けるルシアスの瞳は、疑問の色が濃さを増していく。






「いやぁ、何でと言われましても。
奴隷とは、そういう卑しい者なのです。
────それしか言い様が無いのですが」



男は困り果てた。







「奴隷というのが、身分が低いっていうのがそんないけないことなの?
ただそれだけのことで、こんな酷いことしていい理由になっちゃうの?」



「.............姫様にはまだ難しい話だったかもしれませんね。
でも、いずれお分りになりますよ。この卑しきものと貴方様の違いが」







男は奴隷と呼ばれたその人を塵をみるような目で、そしてルシアスを敬うような目で見て困ったようにまた笑った。



 


 
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