mirage of story



 
 




「この!」
 
 
 
ッ。そして彼女は蹴り飛ばされたその人の元へ駆け寄って尚も迫る非情な足を押し退ける。
そして一寸の迷いも無く倒れるその人と男の間に滑り込み、その人を庇うように小さな体を精一杯に広げて立ち塞がった。






「なっ!
ひ、姫様!?」



動揺する男。
それを見てライルと子供達も、彼女と同じように立ち塞がる。

.......。
蹴る者と蹴られる者の間に小さな壁が作り上げられる。










「危ない、姫様!
何をなされるのですか!?

このようなもの、姫様のお目に触れてはならない汚れたものでございます!
今すぐに片付けますので、そこをお退き下さい!」




倒れるその人を庇うルシアス達の姿に、蹴り飛ばした方の男は焦らない筈は無い。

男の中では正しく且つ当然の行動をしているつもりであったのだから、尚更に驚いていた。







「嫌よ!
ねぇ、おじさん?酷いわ!どうしてこの人を蹴ったりするの!?
倒れているのよ?怪我でもしているかもしれないじゃない!」



ルシアスは言う。






「そうだよ、おじさん!
倒れてる人を蹴るなんて、駄目なことだよ!」




彼女の言葉にライルや他の子供達も加勢する。
甲高い子供達の声の真っ直ぐで必死な声は重なり合う。








「ハハハ....困りましたねぇ。
姫様、それに君達?
こいつは奴隷、姫様のお心遣いは無用な者なのですよ?」




奴隷と呼ばれたその人に軽蔑するような冷たい視線を送る。

ッ。男は自分の前に立ちはだかる子供達に優しい視線で言う。







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