mirage of story
 
 
 
 
 
 
 
シエラは差し出される手を見つめ、もう一度ネビアに視線を戻す。






(......ネビアさん)




安らかに瞳を閉じるネビアに、シエラの頭に一つの言葉が過った。
それは、ネビアが動かなくなってしまう間際に言った言葉。



"自分のことを大切に想ってくれている人を、悲しませちゃいけない"

彼女は、ネビアは優しい顔でそう言った。






――――。
自分のことを大切に想ってくれる人。

その言葉で頭に浮かぶのは、今自分に手を差し伸べてくれるカイムの姿。

あぁ、この人のことなのか。
シエラは漠然と思う。









(私......ネビアさんが言ってくれたことが分かったよ。
自分が大切だと思う人が居なくなるってやっぱり凄く、哀しいことだって)




シエラは動かないもう冷たくなったネビアの手をそっと握り締める。







(こんな哀しい想い.....させちゃ駄目だよね、ネビアさん)




シエラは握り締めたネビアの手に一滴の涙を落として、そっとその手を離した。

――――。ッ。
そして、自分に向かって手を差し伸べてくれる仲間の元を見る。









「.........行くわ」



「あぁ」




見つめていた彼のその手を取り、そして立ち上がる。

.........。
そして彼女は名残惜しさを抑え込めて、動かないネビアに背を向ける。







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