mirage of story
 
 




 
 
 
 
「.............仕方がないんだよ、シエラ」



少し俯き加減で答える。
彼女の声が、言葉が胸に痛く刺さる。






「仕方がないって.....っ!」




あまりにあっさりとした割り切ったような言葉。
ッ。彼の言葉にシエラは思わず取り乱してしまう。


痛い、胸が痛くなる。
取り乱す彼女を直視出来なくて、カイムは俯いたままに胸の痛みを堪えて言う。











「.........。
ネビアさんには酷いことを言うようだけどね、今の俺にはシエラの方が大切なんだよ。
彼女よりも自分よりも、今は貴方の方が大切なんだ。

だから、少しでも貴方に危険があるのなら俺は全力でその危険から貴方を遠ざけるつもりだよ。
だから、もう此処には居ない方がいい」



「.........」




彼女は答えない。
俯いたまま、カイムは言葉を続ける。






「それにネビアさんだって、自分のせいでシエラがずっと悲しい顔をしているのは嫌だと思うんだ。
自分のせいでシエラが危ない目に遭うのは先に進めないのは、きっと望まない。

............いずれ大地が、彼女を還してくれる。
だから行こう、シエラ」




ッ。
ずっと俯いていた顔を上げる。

そして自分の方を真剣に見つめる彼女にカイムは手を差し伸べた。






「.........」



手を差し出すカイムの顔は、溜め息が出るくらいに優しかった。







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