mirage of story

〜2〜






「......んぅ────」



午後の日が差す静かな部屋の中、その部屋の小さなベッドの上で横になっていた彼女は呻くような声を洩らし目を開いた。


陽が差し込んで風に揺れるカーテンの影が起きたばかりのシエラの瞳に映る。











「.......ここは」




何処だろう。
一瞬、シエラはそう思い体を起こして部屋の中を見る。


木の薫りがする壁に小さなテーブル。
今自分が居るベッド。

温かい雰囲気の落ち着く部屋だった。











(そうか。
此処は......アトラスの宿ね。
あの男の人に案内された────)





部屋を一通り見回したくらいに、ようやく寝ていた頭が動き出しちゃんと働くようになった。

――――。
彼女の思考回路が眠りに落ちる前の記憶を呼び覚ます。








「あれ.....カイムが居ない」



ベッドの上で少しだけ体を起こした彼女は、一緒に居るはずの仲間の姿が見えなくてベッドから立ち上がろうとする。








「よいしょ.....って、きゃっ！」




だが、勢いよくベッドから立ち上がろうと反動を付けたシエラの体はバランスを崩しベッドから落ちかける。


.......。
ッ。

それを何とか落ちる寸前で堪えて、シエラはそのままの姿勢で静止させる。





　
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