mirage of story
大丈夫。
そう自分に言い聞かせて、シエラは握り締めた剣をテーブルの上へと置く。
「──────......」
静かな部屋。
その中に一人。
静寂から来る耳障りで何処か心地良いノイズに彼女は暫し浸った。
「――――。
お....おい!?大丈夫か!?」
ッ。
と、静けさが支配する部屋の中に居るシエラの耳へ唐突に声が飛び込んできて浸るノイズから意識を手放す。
声は扉を一枚隔てた向こう側から。
そこから聞こえてくる。
その声からは焦燥を感じた。
「?」
疑問に首を傾げ耳へと届いた少し上ずった声に耳を傾ける。
カイムの声ではない。
......この声はあのジェイドという人の声。
「おい、しっかりしろ!!」
また声が聞こえた。
やっぱり間違いない。
これは、さっき街で出会ったジェイドの声だ。
一体何をそんなに焦っているというのか。
声の主が分かり、安心する。
だがその声の醸す雰囲気に何かがこの扉の向こうで起こっていると察して、無意識のうちに扉へと歩み寄った。
───────ガチャッ。
扉の前に来たからには、当然開けない訳は無い。
そのまま、扉に手を掛け開く。
「っ!?」
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