mirage of story
〜4〜







人が行き交う街の中で立ち尽くす一人の少年の呟きが虚しく消えていくのと、ちょうど同じ頃。


立ち尽くす彼の知らない所。
同じ街のある小さな宿屋で一人の少女と一人の男がお互いに向かい合い座る。













「本当に、ごめんなさいっ！」



しばらく沈黙が続いていた二人。

―――。
その沈黙を勢いのある謝罪の言葉で破る。

勢い良く下げる頭に、彼女の綺麗な髪がバサリと揺れて大いに乱れた。








「いやいや、いいって！
分かってくれれば」




物凄い勢いで謝られる。
その勢いの良さに謝られている側の彼もさすがに押されて一歩後ろに後退った。

少しだけ困った表情を浮かべながら、ハハハと失笑を浮かべる。
彼は、ジェイドは謝る彼女に頭を上げるよう促した。








――――。

さて。
何故今こんな状況になっているかであるが、それもこれも数分前にカイムが突然倒れたのが原因である。


数分前、突然に倒れたのは彼女の仲間である少年カイム。
その傍にはジェイドが居た。

何があったのかは、別の部屋に居た彼女は知らない。
だがその状況を前に、彼女は彼の側に居た第一容疑者であるジェイドを疑った。



怪しいとは思っていたのだ。
街中でいきなり声を掛けてきたり、やたら言動が軽かったり。

何だか危ない人。
そう思っている面が微かにシエラにはあって、それがこの状況を前に表に押し出されたという訳でもある。


その上に問い詰めても、ヘラヘラ笑うばかり。

そんな状況が続き埒が明かないまま、彼女はまずカイムをどうにかしなければと、ひとまず彼への疑いと威嚇を一時休戦し問い詰めるのを止めた。


........。
部屋へと運び、ベッドへと彼を寝かせた。

これでとりあえずは安心。
そう思い、再びジェイドに事情を問い詰めようと鋭い視線を向けた訳であるのだが。





　
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