mirage of story
〜5〜









「........」




正に踏んだり蹴ったりの状態だったキトラ少年は、やっとの思いであの人の波を抜け脇道へと逃げ込んでいた。

一本外れただけの脇道。
それなのに、まるで別世界である。



人混みの熱気からも逃れられた彼は、ひんやりとした脇道の空気を一気に吸い込み吐き出す。
だが吐き出されたその空気は、彼の中で壮大な溜め息に変わる。








「はぁあ......」



転んではぐれて、はぐれた上司を捜し走り回って、結局見付からない。
挙げ句の果て、今自分が何処に居るかも定かでないのだから溜め息くらい出る。







「はぁあ」



間を置いての再びの溜め息。
どうやら彼は相当疲れているようである。




―――。
その溜め息は彼の疲れを増幅させ、増幅した疲れは彼を無意識のうちに道の脇へと座り込ませた。

.......。
座れば襲う更なる疲れ。

彼は座ったことを後悔したがもう遅い。
無駄な抵抗はしないで、そのまま壁へ凭れ掛かり少し休むことにした。













(人多過ぎるよ.....こんな人ばっかりの所は初めてだ)




脇道を囁かに吹き抜ける風。
そんな風を心地良く感じて、彼は壁に凭れたままさっきまで自分が居た人の波に目をやる。

そこには変わらず、うんざりする程の人の波。















.......。

うんざりするの中に、う一つ浮かぶ思考。




この大勢の人はきっと彼等はこの街に住む者や、交易に訪れた商人達。
それに色々な情報や物資を求めて立ち寄る旅人達なのだろう。


そんな人の波に彼は呟いた。









「─────兄貴も、この街に居るのかな?」



浮かぶ思考が言葉になる。
それは本当ならば今の彼の立場では呟いてはいけない、ある人を求める言葉。


兄貴。
それは彼が本当の兄のように慕う人。
今は彼の傍には居ない人。




 

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