mirage of story
 
 
 
 
 
 
 
―――。
そんな両者の互いの想いが交錯する部屋の中には、今までに感じたことのないような複雑な空気が流れる。

決して良い空気とは言えない。
まぁ、当然である。




......。
――――。

そんな中、しばらく黙ってシエラの様子を見ていたジェイドは静かに目を閉じて口を開いた。









「.......悪か。
確かに人間の嬢ちゃんにしてみりゃそうかもしれないなぁ?

当然か。魔族と人間は戦ってるんだもんな。
確かに魔族の中には戦いの中で人間に残酷で卑劣な仕打ちをする奴も居る。
魔族か人間か、たったそれだけの理由で命を奪い合ってるんだもんな」





真剣な声だった。
だがやっぱりまだ彼はこの状況であっても笑う。

その消えぬ笑みに彼女は苛立ちを覚えるが、垣間見得るジェイドの真剣さがそれを抑えさせた。









「だがな、嬢ちゃん。
それは人間側からの一方的な意見だぜ?
俺からしてみればあんた達人間が敵だった。悪だったさ。

今じゃそんな感情どっか行っちまったけど.......確かに人間達が魔族を憎むのと同じように魔族は人間を憎んでいた時期もあったさ」



そしてジェイドは、目を閉じたまま言葉を続ける。








「魔族は人間を殺し、人間は魔族を殺す。
どちらが悪だなんていう問題は無意味、双方の立場それぞれからしてみりゃどちらも悪なんだ。
戦いが無くならねぇ訳さ。
両方が自分を正義と思い込み相手は悪だと思い込む。
どちらも正しくてどちらも間違いなんだからな」




ジェイドの笑みに浮かぶ、嘲けの色が濃くなる。

自分に対するものか。
魔族や人間に対するものか。
それは分からないけれど。











「─────嬢ちゃんよ?
俺はな、気が付いたのさ。人間も魔族も皆が皆悪い奴って訳じゃないと。

人間にだって魔族にだって良い奴も沢山居る。
ただこの時代の流れに目が眩んでほとんどの奴がそれに気が付いていない。

だが俺は気が付いた。
だからこそこの柵から抜け出したいと思って魔族としての人間への憎しみを捨てた。
魔族を捨てたのさ。

だから今の俺は魔族じゃない。だからと言って人間でも無いってのがまた複雑な所だが。

つまりだ。
.....嬢ちゃんの敵じゃねぇってことよ、この俺はね」




 

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