mirage of story
―――。
ジェイドは閉じていた瞳を開く。
「だからな嬢ちゃん?
いい加減その警戒解いてくんねぇかな?
俺は嬢ちゃんにもあのカイムって奴にも剣を向けるつもりは更々無い。戦う意思も無い。
そんな奴にいつまでもそんな警戒心は無駄だと思うね、俺は」
開かれた瞳は、笑っていた。
煌めく紅色の瞳には彼の言うその通り、微塵の敵意も人間への憎しみの色も無い。
ただあるのは彼の自嘲のみ。
「........」
煌めく紅色の瞳が、何だか哀しくて。
ジェイドの言葉が彼女にとっては衝撃的だった。
敵。魔族。
そうとしか捉えられなかった存在。
そんな魔族である彼から零れる言葉は実に正当で全てを否定すべき存在の括りに属すはずの彼の言葉は正しかった。
確かにそうなのである。
人間が魔族を悪だと罵り憎むように、彼等にとっては人間が悪であるのだ。
戦い互いに殺し合っているのだ。
人間は一方的に魔族を悪と言い魔族は一方的に人間を悪というが、両者のやっていることには微塵の変わりもない。
つまりは両者が悪であるというのに。
―――。
そんなことに気付かず、人は争いを繰り返しているという訳か。
人とは、人間魔族その括りを越えてどれ程までに愚かな生き物であることか。
その愚かさにさえ気が付くことの出来ない人という生き物は、愚かを越え哀れに見えた。
「嬢ちゃん?」
その場に固まって、黙り込む彼女に声を掛ける。
「......ごめんなさい。
一方的に取り乱してしまいました。
すみません―――今の私は忘れて下さい」
「構わないさ。
それに今の反応は至って普通の当然の反応だと思うぜ?
酷い奴だと今ので問答無用に斬り掛かってきやがる。
さっきもカイムに同じような反応されたしなぁ、気にするなって」
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