mirage of story
〜7〜
「─────実は私、記憶を失っているんです。
五年前以前の記憶なんですが......今の私の中にそれ以前の記憶は無いんです」
穏やかな光に包まれた部屋の中で、今のこの世界では極めて異質な組み合わせの二人が向き合い話を始める。
人間と魔族。
出逢えば否応無しに斬り合うような、物騒な関係性である両者。
そんな両者が同じ部屋の中、何とも言えない穏やかな雰囲気で会話する。
そんな光景、想像出来る者はこの世界にそう多くは居まい。
「ふぅん、五年前ねぇ。
ってことは、あの戦争が始まった辺りの話かい?」
そんなシエラへジェイドは訊ねる。
「はい、多分。
その記憶も殆ど私の中には無いんですけど、母から色々聞きました。
多分、私はその始まった戦いに何らかの形で巻き込まれてしまったみたいで―――その衝撃でしょうか、記憶が無いのは。
あ、母に教えてもらったとは言っても本当の母では無いんですけれど」
二人の言う戦争。
五年前と聞いて、それを思い浮かべない者は居ない程の歴史的な時。
世界の誰もが知っている最大かつ最悪の戦いの幕開け。
「その私が母と慕っていた人はもう居ません―――魔族に殺されました。
ちょうど一年くらい前の話になります」
そう口にするシエラの顔に、陰が落ちる。
取り乱してしまいそうな生々しい残酷な記憶。
燃える丘。
自分を庇い怪我を負う大切な人に、迫り来る炎。
そして指先に伝わる大切な人の失われていく温もり。
忘れてしまいたい。
なのに、こんなに鮮明に覚えている。
尽々人の記憶の不思議を感じる。
思い出したい失ってしまった記憶は、どうあっても思い出すことが出来ないというのに。
「......何か不思議な感じです。
母さんの死のことを魔族である貴方に話しているなんて。
考えもしなかったことですね」
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「─────実は私、記憶を失っているんです。
五年前以前の記憶なんですが......今の私の中にそれ以前の記憶は無いんです」
穏やかな光に包まれた部屋の中で、今のこの世界では極めて異質な組み合わせの二人が向き合い話を始める。
人間と魔族。
出逢えば否応無しに斬り合うような、物騒な関係性である両者。
そんな両者が同じ部屋の中、何とも言えない穏やかな雰囲気で会話する。
そんな光景、想像出来る者はこの世界にそう多くは居まい。
「ふぅん、五年前ねぇ。
ってことは、あの戦争が始まった辺りの話かい?」
そんなシエラへジェイドは訊ねる。
「はい、多分。
その記憶も殆ど私の中には無いんですけど、母から色々聞きました。
多分、私はその始まった戦いに何らかの形で巻き込まれてしまったみたいで―――その衝撃でしょうか、記憶が無いのは。
あ、母に教えてもらったとは言っても本当の母では無いんですけれど」
二人の言う戦争。
五年前と聞いて、それを思い浮かべない者は居ない程の歴史的な時。
世界の誰もが知っている最大かつ最悪の戦いの幕開け。
「その私が母と慕っていた人はもう居ません―――魔族に殺されました。
ちょうど一年くらい前の話になります」
そう口にするシエラの顔に、陰が落ちる。
取り乱してしまいそうな生々しい残酷な記憶。
燃える丘。
自分を庇い怪我を負う大切な人に、迫り来る炎。
そして指先に伝わる大切な人の失われていく温もり。
忘れてしまいたい。
なのに、こんなに鮮明に覚えている。
尽々人の記憶の不思議を感じる。
思い出したい失ってしまった記憶は、どうあっても思い出すことが出来ないというのに。
「......何か不思議な感じです。
母さんの死のことを魔族である貴方に話しているなんて。
考えもしなかったことですね」
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