mirage of story
そんな彼の微かな変化を察して、更に問いてみる。
「.....ハハッ!俺はそういうにどうも疎くてね。
世間一般大々的に知られてる程度にしか俺も知らない。
すまないね、嬢ちゃん」
ジェイドは、そう言ってヘラッと笑う。
―――。
笑みと言葉の裏には何か隠れている、シエラはそう確信すれども言及はしなかった。
どれだけ言及しようとも今の自分には何一つこれ以上のことは語らないだろうという、前者よりも遥かに濃い確信が彼女にはあったからである。
「────奴等は人間達の村や街を襲っています。
何の罪も無い人間達を、武力や軍力を行使して虐殺をしている......ついこの前もある人間の街、ランディスという街が奴等に消されました。
私とカイムの、目の前で」
街が消される。
街が壊される、などという表現ではなく消されるという現実味の無い表現。
「.......ランディスの街は今ではもう跡形もありません。
奴の、ロアルの闇によって巻き起こされた真っ黒な竜巻のような風が全てを奪って消しました。
私とカイムは―――その目撃者であって、その狂気に身を持って触れた当事者です」
――――。
彼女の顔が恐怖そして哀しみ、恨み憎しみの表情へと移り変わるのが分かった。
そして最終的にその全てが重なり合って、彼女の眉間に深い皺を刻む。
思い出すのは、あの時に感じた自らがこれから先対峙すべき相手の強大さと残酷さ。
突き付けられた歴然な力の差。
そして一層に濃さを増した魔族への―――ロアルへの恨みの色。
........。
それきり暫く黙り込む彼女。
「───────まだそんなことやってやがるのか......あのおっさんは」
そんな沈黙の中で、ジェイドは彼女に聞こえないくらいの極々小さな声で呟きを落とした。
ただの吐息と間違えてしまうような、そんな小さな呟きだった。
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