mirage of story

〜9〜







「────兄貴」



キトラは呟くように言った。

抑えられなくなってきた感情のままもう一度、今度は叫ぶようにして言う。






「兄貴っ！」


「なっ.....お前、どうして此処に！」





キトラにとってもジェイドにとっても、あまりに不意討ちすぎる再会。

――――。
両者の間には今まで味わったことのないような衝撃と動揺が渦巻く。









「えっと......お知り合いなんですか？」




そんな二人の間だけに流れる異様な空気。
それにに気付かないシエラは二人の間の沈黙を破るように口を開く。



そんな暢気とも取れる発言に、ジェイドはハッとして軽く彼女の方を向く。
それから平然を装って何でもないようにフッと一瞬の笑みを見せて彼は言う。







「あぁ、ちょっとした知り合いでね」



本当は、ちょっとしたどころではない知り合いだった。
だがそれをわざわざ、何も知らない彼女を言うことも無い。

自嘲の意も交ざった笑みを一瞬見せて、また真面目な顔に戻ると彼は視線を衝撃的な再会を果たしたキトラに向けて続けるように彼女に言う。















「─────嬢ちゃん。
.....今すぐカイムの奴をを叩き起こして此処から逃げた方がいい」



「え？」




「........いいから言う通りにしてくれないかい？

カウンターの裏に外へ出れる扉がある。
そこから出て、人込みに紛れてこの街から出るんだ。
出来るね、いいかい？」







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