mirage of story
〜10〜








「.....起きて、ちょっと起きてってばカイム!」





異様な空気が満ちるジェイドの居る部屋に背を向けて入ってきたこの部屋。
彼女はベッドの上で何も知らずにすやすや寝息をたてるカイムに声を掛ける。








「────.....」




だが、返事はない。
シエラの声が届いていないようで、カイムはまだ眠りから覚めない。






「カイムってば!」



そんな完璧に熟睡モードのカイム。
彼女も負けじとカイムの体を大きく揺する。


右に左に、上に下。
シエラの激しい揺さぶり攻撃。
その攻撃を受けるカイムの体は、ただされるがままに激しく揺れる。







......。
だが目は開けない。

これは、なかなかしぶとい。
そうシエラは顔を歪める。













(よく寝てるのはいいんだけれど.....今はいい加減に起きてくれないと。

ジェイドさんに早く此処から逃げろって言われたのに、これじゃあ駄目だわ)




........。
ついさっき言われたジェイドの急かすような言葉を思い出す。



逃げろ。
彼の言ったその意味と意図はやはり分からない。

実際、逃げるという必要性を感じることは彼女には無い。
でもジェイドの口調は言葉の意図を理解出来ていない彼女にも、そうしなければと感じさせる圧力があったのだ。








「カイム!
起きてってば!」







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