mirage of story
「まぁ、そうなりたくなけりゃ俺に付いて来るといいさ?
.......奇遇なことに俺もこの街から抜け出さなくちゃならない理由が出来たからなぁ、ハハッ!」
「........」
「────理由は後で説明してやるよ。
だから今は何も聞かずに俺と来い」
ジェイドの姿は後ろ姿で、顔は見えなかった。
でも....でもきっと凄く真剣で偽りじゃない顔をしているんだな、と二人は思った。
「あ、そうだ!」
シエラとカイムに背を向け、外への扉へと歩き始めたジェイド。
――――。
そんなは何歩か前に進んだ所でハッと何か思い出したように足を止め、無造作にポケットの中に手を突っ込む。
「おっさん、お代ここに置いとくぜ?」
そう言い、ポケットから金貨を数枚取り出して今は此処に居ない宿屋の親父さんの顔を思い出し、カウンターの上に置く。
「じゃあ、行こうか!お二人さん」
そう言うと今度はもう振り返らずに宿屋を後にする。
ッ。
そんなジェイドの背を、シエラとカイムは無意識のうちに追い掛ける。
――――。
宿屋を出た三人の影。
そんな影達は人知れずひっそりと、陽が落ち掛けた薄暗い街の中へと消えていった。
.