mirage of story
「何処かに隠れて機会を伺ってるのかもしれない。
油断しちゃいけない」
「えぇ、分かってるわ」
二人は顔を見合せ、互いに意志を確認し合う。
―――――ッ。
そんな二人の間に唐突に遠くから微かに響くある音。
キイィンッ!
それは空気を震わす高い音。
「カイム、今の音....っ!」
シエラは何かを察したように、カイムに視線を送る。
「───あぁ。
これは金属音だっ!
誰かが、誰かが戦っている」
二人の耳に届いた高い音。
それは、戦いの音。
武器と武器とかぶつかり合って響く甲高い金属音。
ッ。
その戦いの音に、シエラはハッと気が付く。
「そういえばカイム。
ジェイドさんは、何処?」
そう。
今更ながら気が付く。
この場から居なくなったのは....敵だけでは無かったことに。
「シエラ、行こう!
多分あの音の先で戦っているのは────」
状況を察しては冷静に音のする方を見つめた。
――――。
きっとこの先に居るのは、あの人に違いない。
ジェイド。
言葉に出さなくても二人の中で共通のその名が出る。
「行ってみよう」
二人の中で一つの名が一致する。
それと同時に、二人の足は自然と戦いの音するその先へと向けられていた。
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