mirage of story
竜への誓い
〜1〜








"――――――目覚めよ、我が契約者"





....何だろう。
頭の中で声がする。

―――――。
彼は、ライルはぼんやりとする頭でくっついてしまったのではないかと錯覚する程に重く閉じた瞼を抉じ開ける。



ッ。
瞼を持ち上げる。
ただそれだけの仕草なのに酷く疲れた気がした。










(俺は、一体)



目を開ける。
するとそこには今まで自分が居たはずの場所とは全く違う不思議な空間。
現実でないような空間。










"目覚めたか、我が契約者よ"




目を見開き、辺りを見回す彼の頭に再び響く声。
低くて荘厳。
だけれど何処か温かみのあるその声は、記憶の片隅に聞き覚えのある。

懐かしい声。
その声にぼんやりとする頭が次第に覚醒されていく。









(......炎竜か?)



ライルは自らに向けられた声に、思い当たる姿の名を心の中で問い掛けた。







".....我が名を覚えていたか。
ほぅ、これほどまでに嬉しいことはない"




――――。
パアァッ!


微かに笑いを含んだ声が聞こえたかと思うと、同時に何にも無かった辺りが揺らめく紅で照らされる。








(.........貴方のことを忘れるわけはない。

炎竜、貴方はいつも此処に居る。
姿は見えなくても、ちゃんと俺の中に居てくれていた)




照らし出された紅の最中、彼は自分の胸元から鎖で繋がれた指輪を取り出す。

取り出された指輪。
それは小さくて、淡く紅い煌めきを放つ。







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