mirage of story
ジェイドは二人の顔を一瞥する。
――――。
それから彼は空を見上げる。
すっかり夜の色に染まった空、其処には煌々と星達の瞬きが彩りを添える。
「でも、ジェイドさん........奴の姿が見えないんです。
奴の、ライルの姿が。
どうしてもあの人だけは、このまま逃げるとは思えなくて」
空を見上げ軽く佇む彼。
そんな彼にカイムは口を開く。
「あぁ.........あいつなら逃げちまったぜ?
そりゃもう尻尾巻いて一目散になぁ?
ハハッ!どうやらお前の見当違いだ、安心しろ?」
ジェイドは空の闇に視線を向けたまま答える。
――――。
空に浮かぶ月に照らされるその彼の横顔。
ッ。
何故だか胸が締め付けられるような感覚に襲われて、カイムは思わず目を逸らした。
「.........さぁてと、じゃあ行くとしようか?
逃げた奴等が追っ手引き連れて戻ってくる前にな」
「は、はい!」
そう言うと、ジェイドは長い銀髪を翻し郊外の果てへと歩き出す。
――――。
その後を追い掛けるようにシエラとカイムの二人の影が続いた。
三人が去った後のその場所は本当にもう何も無い。
其処にはただただ静かに夜の闇だけが佇んでいた───。
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