mirage of story
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少し言いにくそうに、だが正直に告げる彼。
そう、彼は此処で見ていた。
此処で繰り広げられた今では敵同士と化した共同士の戦いを、その死闘の始終を彼は木陰に身を潜めたままただ見ていた。
――――。
あの宿。
ジェイドと衝撃的すぎる再会を果たしたあの後に、彼は重要なことに気が付いてしまった。
兄貴は追われる身。
その兄貴と宿屋で一緒にいた少女もまた、自分達が追っている者であったということに。
今回先鋭部隊に与えられし任務はジェイドの討伐ともう一つ。
指輪を持つ者を捕らえること。
その指輪を持つ者と知らぬ間に出会ってしまっていたということに、もう彼等が逃げた後の部屋で気が付いた彼。
ッ。
指輪を持つ者とジェイドが共に居た経緯は判らない。
だが相手は人間だ。
きっと何か理由が無ければ仮にも魔族であるジェイドが共に居るはずがない。
ッ。
そこで浮かび上がるはある一つの可能性。
そうか。
兄貴はあの指輪を持つ者に、あの少女に誑かされただけなのではないかと。
誑かされて、騙されて部隊から逃げただけなのではないかと。
もしそうならば。
もしそうであるならば、少女を捕まえることが出来れば兄貴を部隊から遠ざけるものは何もない。
だから、だからきっと戻って来てくれるはずだと。
随分と都合のいい考えだった。
だが今の彼はそういう方向にしか考えを向けることが出来なくて、その可能性と勢いに任せ宿屋を飛び出した。
隊長に知らせなければ。
その一心で、キトラは埋もれてしまうような人込みの中から必死にライルの姿を捜し奇跡的にも、自分のことを捜していたライルと再会。
――――。
そして無事に再会を果たした彼によりライルへと情報が伝えられる。
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