mirage of story
.......。
彼は何一つ漏らさずに話した。
指輪を持つ者のことも、宿屋であった出来事も。
そして、指輪を持つ者と共に居たジェイドのことも。
キトラには賭けだった。
もしジェイドが隊長に、部隊に見付かれば兄貴は殺されてしまう。
だが逃亡者と、あのシエラとかいう少女と一緒ならば彼女が兄貴を無理矢理に連れ出したということになり無罪放免になるかもしれない。
甘い考えだとも思ったが、そんな考えが思い浮かぶ程にキトラは必死だったのだ。
――――。
殺されるか、戻ってくるか。
この賭けの結末は極端に吉凶に別れていた。
ッ。
そして彼は意識の途切れる少し前の少女との会話でジェイドが言っていた場所を思い出しライルと共にその場所へと向う。
彼は戦うためではなく
、大切な人を取り戻すためにその場所へと走った。
ジェイドが言っていた場所、通りをひたすら東に向かって走り抜けた先の町外れ。郊外。
――――。
だけれどそこは誰の姿も無い静寂な空間。
逃げられたか、それとも動きを読まれたか。
そう思ったが、ライルとキトラ含む先鋭部隊は他に当てもなくてこの場所での迎え撃ちに賭けることにした。
迎え撃ち。つまり戦い。
お前は此処から離れろ。
これから始まるであろう戦いで傷付くのは、彼にとって一番大切な者。
任務とは言えまだキトラはその覚悟も納得も出来ていない。
彼を傷つけたくない。
そう思っての判断、ライルは彼にそう言った。
ッ。
自分も戦う。
兄貴の無実を証明するために、戦いたい。
勿論キトラはそう食い下がった。
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