mirage of story
 
 
 
 


.........。
 
そう思いながらこれから戦場となるだろうこの場所に背を向け歩いていると、自然と足が止まっていた。
前に踏み出せなくなっていた。




そして駆られる衝動の波。

逃げちゃ駄目だ。
このまま全てから目を逸らしてはいけない、立ち向かわなければ。

此処で退いたら、何もかも後悔すると思った。





........。
もしジェイドがライルに戦いの末に殺されたとしても、もし兄貴が無事逃げれたとしても―――その結末を自分の目で見守らなければどんな結果でも後悔する。

そう思った。



そう思ってしまうともう自然と彼の足は元来た道へと向く。


ッ。
覚悟は出来ていた。
どんな結末であろうと、この目に映るものを現実と認める覚悟は。


キトラは想いを拳に握り締め、元来た道を急ぎ足で戻っていった。














「────それで見たのか。
ジェイドとの戦いを」



キトラが今、此処に居る経緯を静かに聞いていたライルはその全てをまとめるように口を開く。

その言葉にキトラは頷く。







「隊長....すいません。
命令を、俺は破ってしまいました」




「.......いや、いい。結局、俺は何も白黒着けてはやれなかったしな。
ジェイドにも、あの指輪を持つ女にも逃げられた。

その上この怪我だ。
お前が来てくれなきゃ、俺はあのまま死んでいたかもしれない。
寧ろ感謝するよ」







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