mirage of story
ロアルは人間を憎んでいる。
そのことを知ったのは、旅の途中にある小さな村へ立ち寄った時のことだった。
その村は人間と魔族との間に生まれ、世の中から追われた人々が集まり寄り添いながら暮らしている村だった。
人間からも魔族からも見離された人々が暮らしていた。
そんな境遇故に決して豊かとは言えないその村。
――――。
そこでシエラは一人の少年と出会った。
その少年の名はカイム。
聞いた訳では無いので定かでないが、きっと歳は同じくらい。
紅の髪に深紅の瞳の少年。
彼は実に色んな事を知っていた。
それは彼自身が実際にその地に赴いて見たものではないけれど、本などで得た知識とこの世界の情勢に対する知識に長けていた。
カイム。
彼と出会いシエラは色々なことを知った。
「―――俺はしなければならないことがあるんだ。
今の自分じゃ、まだ出来ないけど....必ずいつかやってみせるよ。
俺はそのために剣を身につけようと思ったんだ」
彼との関わりはシエラが剣を教わりたいと彼を訪ねたことから始まった。
シエラはこの村に幾日か滞在し、村の人からこの村にいるカイムという少年が剣に長けているということを教えてもらった。
........。
旅を続けていくためには、自分自身を守る術が必要。
そう一人での旅の中で痛感したシエラは、村の中で一番剣術に長けているというカイムの噂を聞き彼を訪ねたのである。
「......え...」
そんな剣を教えてもらえるよう頼みに行ったシエラに、カイムが唐突にそう言う。
あまりに唐突な言葉。
思わず間の抜けた声が出る。
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