mirage of story
「.....貴方は何のために旅をしてるんだ?
こんな世の中にたった一人で」
カイムはそんなシエラに真剣な顔で尋ねた。
「――――私は.....私は大切な人の仇をとるために旅をしているんだ」
真剣な瞳。
その瞳に答えるように、シエラも真剣な眼差しで答えた。
不思議だった。
さっき会ったばかりのはずなのに、気付けばシエラはカイムにすべてを話していた。
シエラは何か緊張の糸がプツリと途切れたように、出会ったばかりのはずのカイムに話し続けた。
それを彼は、カイムはそれをただ頷いて聞いてくれた。
最初シエラは、何故こんなこと話してるんだろう。
そう思った。
だが、だんだんと話しているうちに不思議とシエラはカイムと話しているこの時間に安らぎを感じていた。
この時間がもっと続けばいい、そうとさえ思った。
始めは剣を教えることを、何処か拒んでいた様子のカイム。
だが話が終わるまでずっと真剣に聞いていた彼は、彼女が強くなり目的を果たすことを条件にシエラに剣を教えることを承諾した。
そして次の日から、シエラとカイムは剣の稽古が始まることとなった。
シエラはカイムから剣だけではなく、世界のことや魔族のこと色々なことを学んだ。
自分のことカイムのこと、短い期間の中だったがその間でたくさんのことを語り合った。
そしてあっという間に時は流れ、シエラがこの村を発つ前の日。
二人はいつものように、剣を振るっていた。
「......シエラって凄いよな」
日が空高く昇ってきた頃に、カイムはまた唐突にそう言った。
「え、凄いって.....剣が?」
カイムの言葉にシエラは、きょとんとした目線をカイムに送った。
「あぁ、それもそうだけど.....シエラ自身がさ。凄いと思って」