mirage of story
何も聞こえない扉の向こうに、男はフッと力を抜き身を翻す。
「あぁぁ....もう一寝入りでもするかな」
一瞬走った緊張は早くも消え、男は欠伸をすら。
男はさっきまで凭れていた椅子に再び腰掛けるともう一度大きな欠伸をして身体を椅子に預けた。
ちなみに今は、闇溶ける夜中。
眠さはすぐにまた男を襲い深い夢の中へと男の意識を墜としていく。
─────.....ッ。
男の意識が完全に夢に墜ちた頃、外から再び小さな音がした。
だがその音はさっきとは違った音で、何かがこの小屋に当たったような音だった。
ボオォォ.....ッ。
そして暫くして今度は比較的大きな音が絶え間なく男の居る小屋の中を支配する。
そしてその音を追い掛けるように充満する焦げ臭い匂いと肌を焼くようなジリジリとした熱さ。
ッ。
その音と匂い。
そして熱さに眠りに墜ちていた男は飛び起きる。
「......なっ!?
ゴホゴホッ.....こ...れは」
飛び起きた男。
彼は自分の目の前に広がる光景に目を疑う。
.......。
驚きに声を上げようとするが、焦げ臭さと部屋の中に充満する煙に喉がやられてまともには話せなかった。
男の目の前にあったのは、自分を包み込むように燃える炎と前も見えないくらい充満した煙。
この光景は、寝起き眼のこの男には刺激が強すぎる。
―――。
そう。
男の居る小屋は燃えていた。
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