mirage of story
 
 







男は拳にグッと力を込めて、唇を噛み締めた。


ダッ。
そして炎と異臭が支配するこの場所から男は走り出す。


行く先は城。
城までは馬で駆けても三日はかかる。
人の足ならその倍、いやもっとかかるだろう。

決して近いと言える距離なんかじゃない。





だが、行くしかない。

魔族の軍の駐屯地に火が放たれるなど、反逆行為に他ならない。
人間たちが何か企てているのかもしれない。そうなら国家の危機にだって成りかねない。









「ロアル様に、お伝えしなければ!」



男は前に踏み出す足を速めようとする。










────、ビュンッ。


だがその足は自分の目の前を掠めた矢によって止められる。

ザンッ!
矢は男の顔すれすれを通り過ぎてその先の木に突き刺さった。







「っ!?」



男は驚き、自分の前を掠め木へと突き刺さった矢を見る。
矢は鋭く突き刺さる。

矢には何か紙が括り付けられていた。







「何だ.....これは」




男は矢が突き刺さった木へと歩み寄る。

まだその矢を放った者が潜んでいるかもしれない。
男は周囲を警戒しながら木へと辿り着いた。




───グッ....パサッ。

矢を引き抜いた反動で矢に括り付けられていた紙切れがパサリと落ちる。


男はその落ちた紙切れを拾い上げる。

表は白紙だった。
だが半分に折り曲げられたその内側に何かが描かれていることに男は気が付いた。







 
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