mirage of story
マントの男は、その突き刺さった矢を暫くジッと見つめると
おもむろにその矢を掴み、一気にそれを引き抜いた。
「.......」
木から引き抜き、僅かに曲がった矢の先を暫く静かに見つめて
それから、それをそのまま地面へと放った。
「.....下らん。
欲に捉われ世界を汚す魔族も、それに怯えるばかりの人間も―――全て馬鹿げている」
投げ捨てられ、地面へと虚しく横たわる折れた矢に
男は、吐き捨てるように呟いた。
フードの奥に隠れた男の瞳は、まるで世界の全てを嘲るような光を放っている。
闇に揺らめくその光。
フードから見え隠れするその煌めきは、何かとても冷めていて
酷く色褪せて見えた。
まるで、この世界を静観する神のように
何の感情も灯らない瞳で、男は闇が包み込む空を見上げる。
「......我々は介入者。
この歪み切った世界は―――我々が正す」
男は空を向かって、そう言葉を零したかと思うと
もうそこには、男の姿はなく
ただ、男の居たはずの場所には
折れた矢が一つ、ただ無言で地面に横たわるだけだった――――。