mirage of story
(......格好悪い姿、見られてしまったな)
ライルはジェイドに敗れ傷だらけの状態の自分が運び込まれる姿を想像して心の中で苦笑する。
(隊長の面子、丸潰れだな。
これじゃあまたあいつらの信用なんて得られやしない)
ライルは仮にも先鋭部隊の隊長。
しかもこの若さでの隊長への就任で周りからの信頼もまだ薄く妬まれることも多い。
少しでも信頼を得たい。
日々そう感じていたこの時にこんな事態は結構痛い。
部下に助けられ運び込まれるだなんて自分から見ても格好が付かない。
傷だらけでボロボロの自分。
端から見ても惨敗したのは明らか―――現に惨敗している訳であるから言い訳も出来ない。
そんな情けない姿を晒してしまったのかと思うと頭が痛くなる。
(.....今更嘆いても仕方無い。
負けはしたが今こうして俺は生きているわけだ、儲け物じゃないか)
ッ。
痛くなる頭を諦めるように振り払い一つ深い息をついた。
嫌なことは思い出さないのが一番。
隊長の面子が丸潰れなことも、自分が魔術を使えないという今では周知の現実も。
そしてかつての戦友―――今では逃亡者となったジェイドの更なる裏切りも。
そして敗北も。
全部、全部考えないようにしよう。
今は忘れてしまおう。
(とはいっても、忘れられるわけない。
ああぁあ.....俺は何をやってるんだ)
だが実は失敗や後悔を相当引きずるタイプのライルには、そんな簡単に忘れることは出来るわけもなくてそれどころか余計にブルーな気持ちになってしまった。
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