mirage of story
 
 
 
 
 
 
 
―――......。

色んなことが交錯する頭の中。
その中でも際立って意識を逆立てるものがあった。


それはジェイドに敗れたこと。
それが大きく影を落としていた。









(あいつが....あの人間達の側についたっていうのか?
あのジェイドが)



思い出す戦友の顔。
そして溢れる動揺と焦燥。







(アイツは少なくとも純粋な魔族だ。
俺達と共に人間達を憎み討ち果たそうと剣を取った仲間だった。

なのに.......。
なのにアイツはあの人間たちを庇って俺と対峙した!)




そう。
あの闇の夜の中、ルシアスの復讐に燃えるライルの前に立ちはだかったのは水竜の指輪を持つシエラというあの人間の少女ではなくついこの前まで自分たちの仲間だったはずのジェイド。
一度は信じ合ったはずのかつての仲間。



ジェイドは今では逃亡者。
闇夜で対峙したあの時、追う者追われる者として剣を交えるのは自然の流れでもあった。

.......。
だがあの時の状況には自然の流れでは済まない付加要素があった。







(アイツはあの女を助けた。
憎むべき殺すべき相手であるルシアスの仇を庇い逃がした。
そして結局俺は負け、人間共々逃がした)




ジェイドさえ、ジェイドさえあの場に居なかったらあの闇夜の戦いの結末は確実に違うものとなっていたはず。

逃走者と反逆者。
追われる者同士手を組んだとでもいうのだろうか?








(ジェイド....お前はそこまで墜ちたのか?
ルシアスのことはお前にとってもう他の奴等と同じように過去になってしまったのか?)




ライルは胸がグッと締め付けられるような感覚に襲われる。



ジェイドはライルとそしてルシアスと幼い頃からの仲だった。

毎日のように城を抜け出していたルシアスと俺と日が暮れるまで遊び笑い合った仲だった。






 

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