mirage of story






『―――シエラを迎えに行く』




笑顔で言うカイムのその言葉がシエラにとって、凄く嬉しくて心に染み渡った。


同じ想いを持った仲間が出来た、そんな感じがした。







「―――分かった....待ってるよ!」




シエラの言葉で、お互いの顔に笑顔が灯った。



そしてそんな約束を背にシエラは次の朝、新たなる地へと旅立っていった。










(カイムはロアルのこと....魔族のことについて色んなことを教えてくれた)





それだけじゃない。
シエラはカイムと出会ったことで少しだけ、強くなることが出来たのだと思った。











(―――カイムが私を迎えに来るまで.....一人で頑張らないとな)



シエラはカイムのことを思い出し、再び勇気が湧いてくるのを感じた。







「よし。
そろそろ家に戻ろう」




シエラはそう止まりかけていた足を動かそうとした。






───ラ〜ララ〜....ラララ。

踏み出しかけた足。
その足は唐突に何処からか風に乗って聞こえてきた歌声によって止められる。


歌?
きれいな澄んだ声。
でもどこか哀しい。
澄んだ水の底のような、清らかで且つ底知れぬ闇を持ったそんな歌声。






(.....綺麗な歌)




シエラは思わずその歌声に聞き入ってしまった。







(誰が歌ってるの?)



その歌声は風に乗って聞こえてくる。



ふわり。
舞うように、包み込むように歌声を纏った風はシエラへと流れ込む。

その歌声の風が吹く先。
そこにはあの森があった。





 

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