mirage of story
「え、私が凄いって....何が?」
シエラはまたカイムに不思議そうな目線を送った。
そんなシエラの視線から逃れるようにカイムは少しうつむき加減になり、静かに目を閉じる。
「......俺も魔族を恨んでいる。
出来ればシエラみたいに旅に出て倒してやりたいとも思うよ。
だけど俺はシエラみたいに、故郷も何もかもを捨てて旅には出れない.....俺には勇気がないんだ。
だから、それが出来るシエラは本当に凄い。そう思ってさ」
カイムはそう言うと、顔を上げちょっと自嘲気味に笑ってみせた。
「....それは違うよ、カイム。
私は故郷も何も捨ててない。
あそこは私がいつか帰る場所。自分が帰る場所があるからこそ私は頑張れるんだ」
シエラは言った。
そう。
帰る場所....あの、エルザと共に過ごした故郷と呼べる場所があるから一人でも頑張れる。
シエラはいつもそのことを心の中において旅をしてきたのだから。
「――――俺もいつかシエラのように強くなる。
いつになるかはまだ自分にも分からないけど.....待っていてくれ。
もし俺もシエラみたいに目的を果たすため旅に出たら、シエラを迎えに行く。
そして一緒に魔族を倒すんだ!」