mirage of story
「――――行こう」
世界の姿をその瞳に、しっかりと焼き付けて水竜は短くそう言った。
......パアァァッ。
水竜と炎竜。彼等の身体を細かい光の粒子が包み込む。
太陽の光にも似たキラキラと煌めく光の粒。
その光を纏い蒼と紅、彼等の二色の鱗が美しい色彩を世界に奏でる。
そして。
――――ッ。
光の粒子が完全に彼等の身体を包み込み、その光がパッと弾けた。
弾けた光の粒は、美しい色彩を放ったまま世界へと....."人"の居る大地へと降り注ぐ。
――――キラ....キラッ。
降り注ぐ光は煌めきを放ちながら、ゆっくりとその中で形を変えてゆく。
それは二つの指輪。
蒼と紅。淡く煌めく小さな二つの指輪。
その指輪の蒼と紅は、あの二匹の竜たちの瞳と同じ色をしていた。
綺麗な、奇麗な色だった。
――――カランッ。
小さな乾いた音をたて、二つの指輪は地上に堕ちる。
それと同時に降り注ぐ光は世界と同化して、静かに消えていった。
光が消えた後、そこには何もなかった。
ただ美しき光の余韻と、それを見上げる"人"だけがそこに存在していた。