mirage of story
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"世界が....我等が見守る。そう決めた世界が"



持ち主を失い、地へと虚しく横たわる蒼と紅。二つの指輪。
その指輪の中から壊れた世界を見つめ、指輪に宿りし二匹の竜たちは哀しげに呟いた。






"我等の力。それは本来、世界を守るべきものであったはずなのに.....何故"

"やはり、人に託したのは―――間違いだったのであろうか?"




彼等が自らの力を指輪の中に封じ込め、世界を見守ると決めたその日から幾千年。
それは長いように見えて、古から続く世界の時の中では、ほんの一瞬。



そのほんの一瞬の時で人という世界にとっては、ほんの小さな存在で
世界は儚くも、脆く崩れ去ってしまった。





そんな今。世界を失って、全て消え去ろうとする中で
竜たちは漠然と、絶望に打ち拉がれる人たちを見つめていた。








"間違い.....いや、そんなことはない"




為す術なく、ただ滅びゆくのを待つ人の姿。
その姿は、あまりに愚かで哀れで....儚く見えた。


世界を壊したのは、人。
その人が居なくなれば、これ以上世界は壊れることないはずだ。
そしていずれは、この世界自身の持つ治癒能力で壊れた世界は生き返るだろう。









".....確かに人は過ちを犯した。それは、実に大きな過ちだ。

人は愚かだ。
だが、それ故にとても儚い存在だ。その儚き存在の犯した、たった一度の過ちを我等は.....彼等を見守ると決めた我等は見守り続けなければならない"










 
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