mirage of story
"一度は世界を壊した彼等だが、この先に世界が平和で在り続けるためには―――きっと彼等が必要になる。
.......我等が同胞を地の底に封じてまで託した世界の未来を、彼等はきっと我等が望む道へと導く"
"......我等が望む未来"
"あぁ、我等が望むこの世界が平和で穏やかで在り続ける未来へ。
我が同胞よ。炎竜よ。
......もう一度、彼等に世界を託してみぬか?"
指輪の中から、静かに世界の果てを見つめて蒼き竜―――水竜は、そう問いた。
問い掛けられた紅き竜―――炎竜は暫らく黙り、水竜の視線の先を見据えて
短く、だがはっきりと答えた。
「あぁ、そうしようとも」
炎竜が、答えたその瞬間。
二匹の竜たちの宿る二つの指輪が、共鳴するように光り出す。
蒼と紅。
二つの光が重なり、まるで雨上がりに空に架かる虹のような七色の煌めきを帯びる。
その光は灰色と化した死んだ世界の空へと昇り、壊れた世界を照らした。
そして七色を帯びた煌めきは、やがて白い....何の汚れもない純白の光へと変わる。
"もう一度、この世界を彼等に"
水竜、炎竜。
二匹の竜の声が、一つに重なり光溢れる空へと響く。
――――パアァァ....ッ。
純白のその光は弾けて飛んで、細かい煌めく粒子となり
荒んだ大地に、焼け落ちた森に.....壊れ欠落した世界の隅々にまで降り注いだ。