mirage of story
唐突に現れた、力を持つ人達。
その異種族、新たなる人の姿に世界に生きる人々は、もう遥か昔のように感じられるあの時の記憶.....力に溺れ、世界を滅ぼす程の力を持った一人の男の姿を重ね合わせた。
力の強大さ。
それを考えると天と地の差があった。
だがそれは力の大きさの問題であり、奥底にある力自体の本質は―――極めて近いものだった。
力を持った人々。
力のない人々。
それぞれの人々は力を持つ者と力を持たぬ者で、自然と二つに別れていった。
そして次第に人は、力を持たぬ者を『人間』。
力を持つ者を、過去の戒めを籠めて"魔"と称し『魔族』と呼ぶようになった。
魔族と人間。
二つの種族は、それぞれに国を築き上げていった。
完全に違う種族として、世界に存在するようになった人。
だが、それでも魔族と人間。二つの種族の間には何の溝も隔たりも生まれはしなかった。
力の有無に関わらずに人は人として、互いの存在を認め合い世界を支える二つの支柱として人は世界の中に在るようになっていったのだ。
世界が平和で在り続けるためには"人"が必要だ。
あの時、水竜が言った言葉は本当で―――現実のものになっていた。
世界が平和であるために、もはや人は欠かせない存在と化していた。