mirage of story
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「これは......」





そして竜たちの眠る二つの指輪は、また再び.....人の手により
また、出会った。




世界が壊れたあの時から、行方が知れなかった二つの指輪。

世界の何処かにそれぞれ散らばった指輪を、再び巡り合わせたのは
世界に魔族と人間という二つの種族が生まれてから、また幾千か時が流れた頃だった。




始めに指輪を見付けたのは、その時代の魔族の王であった人物だった。



その魔族の王は、ある時に城の地下にある薄汚れた倉庫の中で、淡く蒼色に輝く小さな指輪を見付けた。

その指輪は、以前は細やかな細工が施されていただろう表面は、すっかりすり減り軽い凹凸が指で何とか判る程度。
色も褪せ、指輪の上には埃が覆っていた。




それを見付けた魔族の王は、その薄汚い指輪に何故だか興味をそそられて指輪を覆う埃を、フゥッと息で吹き飛ばした。

舞い上がる埃。
それは、長い間この指輪が人の手に触れずに忘れ去られていた証拠。



埃を吹き飛ばし、自分の着ていた拭くの裾で軽く磨き、その長い間忘れ去られてい指輪をその魔族の王は眺めた。










「これは......」


魔族の王であるその人は、思わず絶句した。




薄汚れた指輪。
誰からも忘れ去られていたその指輪。

その指輪は何処にでもあるような.....いや、在ったとしても誰も目に留めないような何の変哲もない指輪。









 
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