mirage of story
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目の前に唐突に現れた見知らぬ場所に、その人は戸惑った。

グルリとその場で回り、四方八方辺りを伺う。
だが、やはりそこには何もなく空間が佇むだけ。それだけしかない。







「此処は....何処なのだ?」



魔族の王であるその人は、一人そう呟きを溢した。

だが、返ってくる言葉はない。




―――ッ。

魔族の王であるその人は、ただ漠然とした空間を行くあてもなく一歩一歩彷徨い歩き始める。
ただその場に留まっていたとしても何も始まらない。そう思ったのだろう。



カツンッ....カツンッ。

自分以外何もない空間に、ただ乾いた靴音だけが虚しく響き渡る。
壁も天井もないこの空間では反響するものなど何もないはずなのだが、音は宙に漂い続けその人の鼓膜を震わす。







「本当に此処は、どこなのだ?」



どこまでも広がり続ける空間を前に、疑問は深まるばかりだった。

これは夢か、幻想か?
この不思議な空間が、現実のものではないことだけは判った。










カッ――――。

疑問を抱きつつ、何もない空間を彷徨い歩き不意に上を見上げると、その視線の先で唐突に光が弾けた。




眩しい。そう思い手の平で目を覆い隠す。

そしてその後何秒かして、静かに目を覆っていた指を一本ずつ剥がして、光が弾けた方を見直した。








 
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