mirage of story
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「王!こんな所に居られたのですか!」




失った意識が徐々に戻っていく中で、私を呼ぶ声が聞こえた。

まだボーッとする頭の中。
私はその声を頼りにあやふやな意識を辿っていく。






「.....んんぅ」


そして唸るような声を上げて、私の意識は完全に覚醒した。





「王!」


「......ここは」



私は頭を抱えて、状況を確認しようと辺りを見回す。


聳える棚に、埃臭いような空気。薄暗く陰気な様子が漂うこの空間。
そう。此処の城の地下にある薄汚れた倉庫の中だった。








(.....戻ってきたか)



そう思い自分の手の中を見て見ると、そこには薄汚れた小さな指輪。

その指輪は先程此処での記憶が途切れる前と変わらず、静かに蒼く輝いている。
ただその光は、先程よりも幾らか穏やかに安らいでいるように見えた。








「.......どうかなさったのですか?」



ボーッと手の平の上の指輪を眺める私に、姿の見えない私を捜しに来たであろう兵が恐る恐る私にそう言う。


しまった。
いつまでもボーッしている暇など、私には無かったのだった。

私はハッとして、いつもの王としての自分を作り恐る恐るこちらを見る兵へと顔を向ける。






「いや、何でもない。
少し読み物に耽っておってな」


私は指輪をスッと懐に隠して、ちょうど近くに落ちていた本を手に取りヒラリと兵の前に差し出した。







 
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