mirage of story
「これは......先々代の王が書き記された"新世界白書"でありますか?」
目の前に差し出された本。
その背表紙をまじまじと見つめて、その兵は私にそう問い掛けた。
"新世界白書"。
兵の口から出た聞き覚えのある言葉に、私は差し出した本の表紙を横目にチラリと見た。
"新世界白書"それは私の先々代の王、つまり私の祖父がこの世界の歴史についてを書き記したものだ。
竜が収めていた時代から、世界の崩壊。そして今に至るまでのことを言い伝えを交え事細かに書かれていて、この本はこの国の正式な歴史書とされていた。
国の至る所にこの複製本が配布されており、この国の子供たちはこの本を読み世界の歴史を学んでいる。
その有名な"新世界白書"の原本が、この今私が持っている本というわけだ。
「このようなところで眠って居られたのですね」
兵は興味深く、その"新世界白書"と書かれた本を見つめる。
「あ...あぁ、私はこの本が好きでな。ずっとこの原本を捜しておったのだ。
こんな所にあったとは、私も思わなかった」
私はまじまじと本を見つめる兵につられるように、手に取った本を見つめてそう言った。
本当は今偶然に見つけただけなのだが、興味があったのは事実だ。
この本の複製本は城の書庫にもあって私は好きで子供の頃からよく読んでいたのだが、祖父の書いたこの"新世界白書"の原本を、一度目にしたいと思っていたのだ。