mirage of story
彼は笑っている。
でも、心は笑っていなかった。
心だけ深い哀しみの中に抜け出すことが出来ないでいる、そんな感じがした。
切ない。哀しい。
笑顔なのに、そんな矛盾を感じてしまう自分にシエラは心の中で首を傾げた。
「何か、顔についてるか?」
そんなことを思い、顔を凝視していたシエラ。
ライルは不思議そうに首を傾げてハッとしたように顔を擦る。
「い、いや....何も」
シエラはそんなライルから急いで目を逸らす。
「そ...そんなことより何で貴方がこんなとこに居るかよ!」
だがまだ不思議そうな顔をするライルに、シエラは何とか話を逸らそうと本題へと話の軌道をずらした。
そのシエラの言葉にライルは、あ!と思い出したように口を開く。
「.....あぁ、そうだったな。
俺がここに来たのはちょっとした仕事さ」
(.....仕事?
こんなところで何の仕事があるっていうの?)
この辺りには、この森とさっきまでシエラがいた丘、それとシエラの住む村くらいしかない。
田舎も田舎。
偏狭の地であり、旅人もほとんど訪れることはない。
「仕事って何を....」
「何の仕事かって?」
ライルはシエラの言葉を遮りそう言った。
「え、えぇ」
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