mirage of story
「まぁ.....この新世界白書ってのは歴代の魔族の王が引き継いで書き連ねてるもんってこともあるし、しかも物語調で書いてあるから信憑性はどうか分からんがな。
―――まぁ、ずっとこんなこと話してても疲れるだけだ。
今日はこの辺りにして、嬢ちゃんたち。街の散策でもしてきたらどうだい?
色々ゴタゴタしてて、気を休める暇も無かっただろ。今のうちに休んでおいた方がいいと思うぜ?」
「で....でもまだ色々と聞きたいことが――――」
シエラはカイムと顔を見合わせて、ジェイドを見る。
だがジェイドはその視線を華麗に擦り抜けて、本を脇に抱えたまま二人に背を向けてスッと立ち上がる。
そしてそのまま歩き出すと、軽く二人の方を振り返りフッと笑いヒラリと手を振った。
「そんなに焦んなくったって、俺も此処も逃げやしねぇから安心しな?
此処にゃ嬢ちゃんたちが知りてぇことに関するもんは山程ある。
何たって此処は―――」
軽く振り返った顔を前に戻し、手だけをヒラヒラと宙に舞わせてジェイドは続ける。
「何たって此処は、知識の集う街――――メリエルだからな」
ヒラヒラ手を振り、そのままジェイドは部屋の――――今彼等の居た沢山の本に溢れる書庫から、悠々と去っていく。