mirage of story
そんな一瞬見える彼がジェイドの本質であり、いつもの彼の姿は偽のジェイドであるということが、会って間もないカイムやシエラにも薄々感じることが出来た。
だがそのことに確信はなくて、カイムもシエラも直接ジェイドに対してその疑問をぶつけることは避けているのが現実。
何か触れてはいけないような気がして、ジェイドのその一瞬の変化を見て見ぬ振りをした。
「確かにあの指輪ってのは、竜の認める程の魔力を持つ奴じゃねぇと扱えねぇ代物だ。
―――でも、あのおっさんの.....ロアルの魔力ならあの指輪でさえも扱えるかもしれねぇぜ?
それが分かってて、奴はその指輪をあんだけ血眼になって捜してるのかもな」
ふぅ。一つ息をつき、またいつもの軽い口調に戻って言う。
「この本にも書いてあることが本当なら、嬢ちゃんの持つその指輪がロアルに渉れば世界の一つや二つ、簡単に滅びちまうだろう。
.....そうならねぇためにも、ちゃんとその指輪持ってろよ?嬢ちゃん」
「......はい」
口調にはいつもの軽さが戻ったが、ジェイドの言葉の奥には隠れた重みがあるのを感じて、シエラは頷いてみせる。
そんなシエラにジェイドはフッと笑うと、机へと置いた"新世界白書"と書かれた本を脇に抱えた。