mirage of story
「.......新世界白書の原本を見せてほしい。
そこに俺の知りたいことが、もしかしたら書いてあるかもしれねぇんだ」
「っ!」
ジェイドは自分の吐息で曇る窓ガラスを見つめながら、背中でセシルが息を呑む音を聞いた。
振り向かない。
だけれど、曇るガラスにうっすらと映る彼女の表情が驚いているのが分かった。
驚くのも、無理はない。
自分が常識から掛け離れたような馬鹿なことを言っているということは、ジェイドにも分かっていた。
世界中に在るのは、新世界白書の複製本。
歴代の魔族の王が己の生きた時代を記す、歴史書。
その複製本は魔族の教養として、歴史を学ぶすべとして世界の各地を根付いている。
だが、それはあくまで複製したものに過ぎない。
複製本を作るには、その元となる本.....つまり原本があるわけで。
その原本には、複製本には書かれていない記述がある。
本を複製するにあたり、都合が悪いことや歴史としてはあまりに信憑性のないことは添削されて編纂されるのだ。
隠された記述。
それが記された原本が、メリエルのこの中央図書館に保管されている。
「ですが......ですがジェイド。
新世界白書の原本は、魔族と人間双方の王。それでなければ特別な許可を得た此処の司書官にしか閲覧を認められていません。
それは、貴方も知っているはずでしょう?」